伊藤 高章(立正佼成会附属佼成病院チャプレン)
昨年4月より、立正佼成会附属佼成病院チャプレンの職をいただいている。また以前から大切にしている、がん医療に携わる医師・看護師・薬剤師・医療ソーシャルワーカー・心理士・作業療法士・理学療法士の方々との学びの機会を、継続している。臨床スピリチュアルケアという学問領域の研究を深め普及に努めるとともに、久々の臨床での実践に関わる日々である。
昨今の日本では、スピリチュアリティをはじめとする「宗教」を連想させる領域について語ることが難しい。第二次大戦後の日本社会は、意図的にその言説を抑制してきた。宗教に関する議論が成熟していない感がある。そのため、世界保健機関 WHO が人間の健康を4側面(身体的 physical・心理的 mental・社会的 social・霊的 spiritual)から捉える姿勢を明確にしているが、日本社会ではこのスピリチュアルの座りが悪い。宗教やスピリチュアリティに関する全体的な議論は他に譲ることとし、ここでは医療やケアに関わる臨床スピリチュアリティについて考えてみたい。