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「明日への提言」  バックナンバー: 2020年

足元を見よう

ブライアン・バークガフニ(長崎総合科学大学教授)

 

 近年、「宇宙」という言葉をよく耳にする。宇宙探査、宇宙開発、宇宙旅行などである。アメリカのスペースシャトルに搭乗した元宇宙飛行士は、全国の小中学校を訪ね回り宇宙へ夢を抱くように子供たちに言い聞かせている。宇宙開発の賞賛を歌って「生命の起源に迫る」という高慢な予測までする。日本宇宙航空研究開発機構の代表は、宇宙・航空分野において日本は厳しい競争環境にさらされているので、「新たな世界を切り開く挑戦的な研究開発に取り組み、日本の宇宙・航空分野を牽引して行かねばならない」と主張する。先般、実業家の前澤友作氏は、民間人として世界初の月周回旅行を契約したことを明らかにして話題を呼んだ。

 しかし、スペースシャトルや国際宇宙ステーションに見る有人宇宙飛行の技術がいくら発展しても、飛行士たちは地球の水、食料、空気を持参しなければ宇宙で生存できない。私たちはとりもなおさず「地球人」である。ハリウッド映画『オデッセイ』は、火星に一人取り残された飛行士が種芋を見つけて、火星の土と自分の排泄物を使ってジャガイモの栽培に成功する様子を描くが、おとぎ話の域を出ない。

 人間が宇宙開発に打ち込んでいた間、地球温暖化、異常気象、海洋汚染、動植物の絶滅など、環境問題が深刻化してきた。空を見上げる前に、私たちはまず足元を見つめて、唯一の住処である地球を守るように奮励努力すべきではないだろうか。

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