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「明日への提言」  バックナンバー: 2020年

三国因縁釈迦一代伝記について(前編)

岩井 昌悟(東洋大学教授)

 

1.書誌情報

 2020年3月にご退職された川崎ミチコ先生から、研究室の整理の際に『三國因緣釋迦一代傳記』なる本をありがたく頂戴した。私は先生と日頃、日本の仏伝についてお話しする機会があり、先生は以前から退職の際にはこの本を私に下さると約束してくださっていた。

 以下に、日本の古典籍に門外漢の私が、先生から頂戴した後にこの初見の本の書誌情報にどうやってアプローチしたか、その次第を書いてみよう。

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日本語音韻史研究と佼成図書館所蔵古文献

坂水 貴司(広島経済大学助教)

 

1.日本語史研究と古文献

 日本語学は言語としての日本語を研究する学問分野である。現代日本語はもちろん、直接聞くことのできない古代の日本語についても研究の対象となる。

 現代では直接聞くことのできない古代の日本語を調査するとき、その資料としては古文献などの文字資料や、現代日本語および同系統の言語などが選ばれ、様々な資料を参照することとなる。その中でも古文献を使用する方法は、そこに記された言語の年代が比較的よく分かるので、広く用いられている。

 古文献にも様々な種類がある。なじみの深いものとしては『伊勢物語』『源氏物語』等の王朝文学作品が挙げられる。しかし、それらの多くは複数回の転写を経ており、成立当初の言語の様相を留めていない可能性がある。その一方、仏典や漢籍などの漢文に付けられた訓点は、訓点を付けた当時の筆跡がそのまま残っている場合が多く、資料の年代がわかりやすい点から音韻史研究(発音の歴史の研究)や語彙史研究において特に重要視されている。

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足元を見よう

ブライアン・バークガフニ(長崎総合科学大学教授)

 

 近年、「宇宙」という言葉をよく耳にする。宇宙探査、宇宙開発、宇宙旅行などである。アメリカのスペースシャトルに搭乗した元宇宙飛行士は、全国の小中学校を訪ね回り宇宙へ夢を抱くように子供たちに言い聞かせている。宇宙開発の賞賛を歌って「生命の起源に迫る」という高慢な予測までする。日本宇宙航空研究開発機構の代表は、宇宙・航空分野において日本は厳しい競争環境にさらされているので、「新たな世界を切り開く挑戦的な研究開発に取り組み、日本の宇宙・航空分野を牽引して行かねばならない」と主張する。先般、実業家の前澤友作氏は、民間人として世界初の月周回旅行を契約したことを明らかにして話題を呼んだ。

 しかし、スペースシャトルや国際宇宙ステーションに見る有人宇宙飛行の技術がいくら発展しても、飛行士たちは地球の水、食料、空気を持参しなければ宇宙で生存できない。私たちはとりもなおさず「地球人」である。ハリウッド映画『オデッセイ』は、火星に一人取り残された飛行士が種芋を見つけて、火星の土と自分の排泄物を使ってジャガイモの栽培に成功する様子を描くが、おとぎ話の域を出ない。

 人間が宇宙開発に打ち込んでいた間、地球温暖化、異常気象、海洋汚染、動植物の絶滅など、環境問題が深刻化してきた。空を見上げる前に、私たちはまず足元を見つめて、唯一の住処である地球を守るように奮励努力すべきではないだろうか。

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